今日は前回の記事の続きです。
前回のまとめ
- ゲームを「誰かが勝ち負け・進捗・クリア条件と、それに見合う報酬を併せてパッケージ化したもの」とする
- 人間の脳も動物の臓器である
- 学習よりゲームをしてしまうのは当たり前とも言える、ゲームのほうが報酬がこまめに設定されていて確実にもらえるから
今日は、「学習やしなければならないことを、必要に応じてゲームより優先するにはどうすればいいか」をお話しします。
1つめ、ゲームで得られる報酬を見直す、小さくする
ゲームで得られる報酬は、たいていブーストされている
ゲームで得る快感はよいものです。スプラトゥーンのナワバリバトルで勝ったら嬉しいし、マイクラで古代の残骸(とても珍しいブロック)を掘り当てた瞬間も快感です。
他にもソシャゲでレアを引くとか、パズルゲームでうまく連鎖ができたときもヤッターと思います。
この快感は、「勝った」とか「レアを引けた」という事実以上に、効果音やBGM・視覚効果によってブーストされています。
ゲームを開発している方々が、「勝ったときに、より嬉しく感じてもらえるように」と工夫をこらして設定しているからです。
たとえば私かおるんは、10年近く前にパズドラにハマっていましたが、コンボができたときの音が心地よかったのを覚えています。
テレビのCMで見たことのある方も多いかもしれません。ふぁんふぁんふぁん……と音階が上がっていくアレです。(YouTubeで「パズドラ CM」で検索すると今も見られるかもしれません)
コンボを重ねるほど色や視覚効果も派手になっていって、どこまでコンボが続くかドキドキしました。
あれがもし全くの無音で、ブロックが消えるときに跳ねるような効果もなく、黒い画面に白字の明朝体で「10コンボ」と表示されるだけだったら、あんなにワクワクしなかったと思うのです。
また、いわゆるソシャゲのガチャで、レアが引けたときにだけ光ったり、虹色だったりする演出を見たことがある方もいると思います。
パズドラでも確か、レアを引いた時は虹色か金色の卵がでてきた記憶があります。それを見て「うわーーレアだ!!!」と興奮していました。
いわゆる「脳汁が出る」みたいな感覚でした。
作られたゲームでは、このように「事実以上に、効果によって快感はブーストされている」と俯瞰する意識を持つだけでも、少し冷静になれると思います。
ゲームで得られる報酬は、ゲームの外には持ち出せないものが多い
次に確認しておきたいのは、「ゲームで得られるもののうち、ゲームの外に持ち出せるものと持ち出せないものがある」ということです。
わかりやすいものでいうと、リングフィットアドベンチャーやFit Boxingでつけた筋力や体力は、ゲームを閉じてもいつでも使うことができます。
学習を目的とした アプリで学んだことも、もちろんゲームの外に持ち出すことができます。
他にも、 例えば何かを練習して上手くなった経験・自信や、 チームメイトと声をかけあったり励ましあったりするスキルは、これからもずっと使えるものでしょう。
また単純に友達と遊ぶ時間やゲームを通してコミュニケーションを取ることも人生の楽しみの一つです。一人で遊ぶゲームも生活を充実させる範囲でなら、良い楽しみ・余暇の過ごし方だと思います。
しかし、「本当はもっと色々なことをしたかったのに、ゲームをしていたら休みの日がそれだけで終わってしまった」とか、「本当は〇〇の勉強がしたいのに、ついゲームを始めてしまうので勉強の時間をうまく作れない」ということであれば、
いったん「ゲームをすることで脳が得られる快感や報酬」と、「ゲームをすることがあなたやあなたの人生にもたらすもの」を、分けて考えてみると良いと思います。
ここ2週間ほどマイクラにハマっていましたが、 「このチェストを珍しい鉱石やブロックでいっぱいにするのは楽しいけれど、 この鉱石やブロックは銀行口座や財布に1円ももたらさない気がする。」
「死ぬ間際に『ゲームの中のチェストはいっぱいだけど、他には特に充実したものがない』自分でありたいか?
『ゲームのチェストの中身はそこそこだけど、質の高い仕事をしたり稼いだお金でライブにたくさん行けた』ような自分でありたいか?」
と思ったところで、 現実の毎日の学習に思考を向けることができました。
1年後、10年後、どんな自分でありたいかを問い直す
上にも書きましたが、 「ゲームをすることがあなたやあなたの人生にもたらすもの」 を捉え直す時には、1年後や10年後にどんな自分になっていたいかを考えると分かりやすいです。
例えば、 〇〇のゲームのプロになりたいとか、 配信や実況を生業にしたい人や、一生困らないだけのお金を持っている人など、「ゲームだけをやりまくった10年後でありたい」と思うかもしれません。
そうであれば、 問題ありません。
しかしこの記事を今読んでくださっているあなたは、勉強して何かができるようになりたいとか、資格を取りたいとか、こういう学校に入学したいとか、 何かやりたいことがあるのではないでしょうか。
なるべくなら、アナログの紙に手で書くと良いと思います。
1年後や10年後に、あなたはどんな自分でありたいですか。
その自分になるために、今している学習はどのように役立ちそうですか。
学習とゲームをどのようなバランスで行っていくと、その自分になれそうですか。
2つめ、学習をより「ゲーム」に近づける、ゲームで得られる報酬を学習に付与する
報酬はモノや食べ物、試験結果ではなく、やれば必ず達成できるものがオススメ
勉強に報酬を設けるというと、 中高生時代の「〇〇さんは平均点を超えた科目の数×1万円をお小遣いにもらえるらしい」という噂話や、
クラスメイトが「1問解いたらチョコレートを一個食べると決めて問題集を解こうとしたけど全然進まないからめんどくさくなって結局全部食べた」と言っていたのを思い出します。
実は、何かの行動に対してお金などの報酬を設定すると、設定した時点で脳は「報酬をもらったのと同じ働き」をします。ドーパミンがたくさん出て、脳は一瞬だけやる気になり、すぐに通常の状態(勉強をする気がない状態)に戻ってしまいます。
報酬を得るまでやる気が続くのではありません。
しかも、
- 達成して報酬をもらうときにはドーパミンは出ない
- 達成せず、報酬がもらえなかったときは、やる気は通常状態よりさらに低下する
ことになります。(『ヤバい勉強脳』菅原洋平著、および “Predictive Reward Signal of Dopamine Neurons” より)
したがって、お金や食べ物を学習の動機づけにしないほうがよいのです。
学習において報酬を決めるなら、
- 〇〇の問題を自信を持って解ける自分
- 自分で計画をたてて勉強したという経験
- 〇〇を暗記している状態
のような、「外的要素がなく、自分が勉強をすれば達成できるもの」がオススメです。
報酬を明文化することは、学校の定期試験でも、受験でも、趣味としての学習においてもオススメです。
いま学んでいることが一区切りついたときにどんな自分になっているだろうか、あるいはどんな自分になっていたいか、書いてみてください。
協力する・励まし合う・競い合うことは学習でもできる
ゲームにおいて、誰かと協力したり励ましあったり、一緒に喜んだり、ときに競い合ったりするのは大きな楽しみです。
先ほどスプラトゥーンの勝ち負けがストレスになっていたと書きましたが、コミュニケーションが「ナイス」と「カモン」ボタンしかない中でも味方と息が合ったプレイができたときの喜びは、他のゲームで味わったことがないものです。
こういった喜びは学習にも持ち込むことができます。
目標をお互いに言い合えば励まし合えるでしょうし、分からない箇所を友達に聞いたり教えたりすれば協力プレイになるでしょう。勉強法をシェアしあうのもいいですし、年号暗記のゴロ合わせを共有するのもいいですよね。
ゴロ合わせは本も売っていますし、ネットの海にもたくさん転がっていますが、ネタが通じる相手が少ないニッチなゴロ合わせのほうが、刺さりやすくて忘れづらいです。
さきほど「外的要因の報酬を決めないほうがいい」と書きましたが、ライバルの存在はやる気を引き出す良い要素になります。
(勝敗で何かをあげるとか奢るというのはやめたほうがいいです。)
とくに「なんだか今日は気分が乗らないな」という日にライバルの姿を見かけると、俄然やる気になれるのです。
目標を立てる→振り返る、を繰り返して学習という「自分攻略ゲーム」は上手くなれる
最近よく、学習とは「自分という生き物を飼い慣らし、やる気をコンスタントに引き出して学習に向かわせ、自分の覚えやすい方法や取り組み方を見つけてあげるゲーム」だと感じます。
学習にはもちろん、日常を充実させる楽しみの要素や、試験の成績で合否や入学可否が決まるイベントという面もあります。
これはマクロな目で見たときの見え方であって、ミクロな目で見れば、つまり毎日やっていることは「自分攻略ゲーム」だなとつくづく思うのです。
このゲームの面白いところは、誰でもだんだんうまくなれるところです。
自分はどういうものが机にあると勉強がはかどるか、視界に何があると気が散ってしまうか、だいたい何日同じ場所で勉強すると飽きるのか、ローテーションを何日にすれば飽きないのかといった、自分という生き物を観察する要素も面白いなと思います。
また、暗記も聴くほうが覚えやすいものと読むほうが覚えやすいものがありますし、ゴロ合わせの作り方もだんだん上手くなっていきます。
計画の立て方や振り返りについても、自分に負荷の少ないやり方がだんだん分かってきます。
上手くなっていけるのです。
次の記事ではTipsとして、学習とゲームにおいて私かおるんが行っている工夫をいくつか挙げようと思います。
このページに全て書く予定でしたが、長くなってしまいましたので。