- この記事は、うつ闘病5年目だった自分が宮野真守氏のライブに行くことになったいきさつの話の続きの話になります。
前回のあらすじをまとめると
- 落ち込んでいたときに気晴らしに聞いたラジオで
- 宮野さんの笑い声がとてもあたたかかったので
- ライブのチケットを取りました
という感じ。
そしてこの日がやってきた
ツアー最終日、2014年6月8日。
この日は、宮野真守さんの31歳のお誕生日でした。
会場は5000人弱の会場で、席は前でも後ろでもなく真ん中あたり。
1曲目は「NEW ORDER」という曲でした。
「NEW ORDER」とは直訳すると「新体制」のことで、「今までとは一味違う宮野真守を提示していく」ということだそうです。
サビの歌詞は「とっくにもう目覚めてしまった衝動」と始まります。
目覚めてしまった衝動
とっくにもう目覚めてしまった衝動
未来は不確かだけど
もう既に we can’t go back no more
僕らの New order…
この歌詞がぼくに突き刺さりました。
自分にナイフか何かが飛んできて刺さったのかと思うくらいの衝撃でした。
会場の大きさとか距離とかではなくて、何故か、この言葉はぼくのところに、スコンと飛んできたのです。
何か大きくて黒い塊
この時ぼくは、うつの闘病の5年目で、良くなる気配がありませんでした。
「社会に居場所をみつけたい」「貢献したい」と願うことすらも忘れていました。
ただ、どうしようもない、心の中にある何か大きくて黒い塊を抱えて、生きていました。
「とっくにもう目覚めてしまった衝動」という歌詞は、歌声は、その黒い塊に刺さりました。
その瞬間、ぼくは塊の中身を見ました。
それは、ぼくの「このままではいたくない」「また元気になっていろんなことがしたい」という心の叫びでした。
その心の叫びは、まさに「目覚めてしまった衝動」でした。
見なくて済むように、叶わない願いを抱かないように、ガチガチに固めて塗りつぶしておいたのに。
目覚めてしまった衝動は、自分の中を駆け巡りました。
誘い
ビリビリと駆け巡るものを感じながら、曲を聞いていました。いや、ステージを見ていました。
ステージを「浴びる」というのが正しいかもしれません。
NEW ORDERはアップテンポのダンスチューンです。
宮野さんが、ダンスしながら、歌いながら、スポットライトを浴びてステージ上にいる姿を、目の当たりにしていました。
その姿は堂々としていて、「僕はここまで来たよ、君は?」と問いかけられているように感じました。
「君も来るなら、一緒に行こうよ!」というあたたかい誘いのようでもありました。
『とっくにもう走り出してる衝動』
『つまらない未来ならいらないから ムリしても止めないで』
うつの治療はムリしてはいけないと言いますが、このときの「ムリしても止めないで」は心の叫びそのものでした。
認めてくれること。あたたかく肯定されること。
あとはもう、耳に入ってくる歌詞がことごとく、「病気をなおしてまた色んなことがしたい」と思えた自分を認めてくれる、あたたかく肯定してくれるものに聞こえていました。
『踏み出してゆく 記憶も咎も投げ捨てて』
『たとえ何を失っても 届くことのない願いでも 止められないもう戻れはしない』
『雲の切れ間から光が射すように 思いもいつか晴れるのでしょう』
『夢に向かい歩いて行こう 描いたヒカリを抱いて』
『行くぜ 遥かな未来へ 限りない想い抱いて』
『やりたいことを見つけたとき きっと誰もが輝くHERO』
『例えほらCloudy Sky 滲んで 心が泣いても』
『限りない Brand-new-sky 僕らは一人じゃないから』
『届キマスカ? 聴コエマスカ?』
あとでCDを買って聞き返したら、実は恋愛がテーマの曲やウルトラマンの曲もありました。
しかしなぜかこのときは、自分を励ましてくれる、一緒に行こうと言ってくれる曲に聞こえたのです。
『届キマスカ? 聞コエマスカ?』にいたっては、面と向かって肉声で話しかけられているかのように伝わってきて、思わずうなずいたほどです。
歩き出そうとした瞬間に吹く追い風のようなもの
うつ患者に「がんばってね」は禁句だなどと言いますが、
「がんばって」ではない、「強制しない、優しい肯定のことば」を、この日の僕はかけてもらいました。
宮野さんはアンコールのとき「僕もライブの準備をしているとき、不安になることがある。でも僕は、挑戦し続けていくところを見せていきたい。みんなも挑戦していってほしいし、それで失敗したり辛いことがあってもまたここに戻ってきてほしい」と話してくれました。
自分が音楽やパフォーマンスから受け取ったことそのものでした。
ぼくは、「またこの場所に来たい」と思いました。
結果からみると、症状が改善するまでに、このライブの日から2年かかります。
上手くいかないことも落ち込むこともありましたが、応援してもらったことと、何よりも「音楽を通じてメッセージをもらう」という体験は、ぼくをずっと支えてくれました。